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最近読んだ推理小説の続編

ジャック・ルーボーの『麗しのオルタンス』が面白かったのですっかりファンになり続編の『誘拐されたオルタンス(創元推理文庫)』を読んだ。相変わらずの登場人物の多さに頭を使い、ちょっと疲れたけれど、読み終わるととんでもなくすっきりするのでおすすめだ。この感じにはまってしまう。

ネタバレ注意です。

前回の『麗しのオルタンス』は〈金物屋の恐怖〉、〈洗濯屋の喧嘩売り〉が話の大筋になっていて犯人は捕まっていないのだけれど、今回読んだ続編『誘拐されたオルタンス』を読むと解決するかもしれない。そして先の二つの事件に加え、シトワイヤン通りにある(だいたいこの辺りの話である)聖ギュデュール教会でついに殺人事件が起こる。厳密に言えばここのオルガン奏者であるシヌルス神父の愛犬のバルバストルが殺されるのだけど、ここでは殺人事件とあえて呼んでいる。そしてタイトルになっているこの話の主役であるオルタンス(哲学専攻の女子大生)が巧妙な手口で誘拐されてしまう事件が追加されどんどん話は複雑になっていく。登場人物も前回登場した人に加えさらに増える。〈美青年〉が9人プラスされる。

1ギュデュール・バーの新しいギャルソン/2デュポン・デュヴァルというバンドのヴォーカルであるトム・バトラー/3シェラロッキスジュク・ホラメシジュディ警部/4ローリー(オルタンスの赤毛の友人)の変わった事業の共同経営者ジム・ウェダーバーン/5グロワッシャン夫人のパティシエの青年、ステファーム/6バルバストルの友人のCMの青年7ー8聖ギュデュール教会の鐘つきに雇われたモリネ・ジャンとクレタン・ギョーム/9〈Hi Hi〉というバンドのヴォーカルのマルタンスコイ 
の9人で、これがまた顔形がそっくりで見分けがつかない。そして全員がある国の出身が疑われていてブロニャール警部がひとりひとりの特徴を見抜き事件解決の糸口にしていくところがドキドキして話に引き込まれてしまった。
ちなみに前作に出てくる、アレクサンドル・ウラディミロヴィッチは行方不明という設定で、代わりにオテロという黒猫が出てくる。

ジャック・ルーボーの作品は、推理小説の中にジャック・ルーボー自身が作家として出版社の編集者とのやりとりをした章も組み込まれていて、登場人物と作者と読者がまるで同じ小説の中にいると錯覚するように創られていてとても不思議だ。是非、この小説の中に入って不思議な体験をしていただきたい。

 

誘拐されたオルタンス (創元推理文庫)

誘拐されたオルタンス (創元推理文庫)

 

 

新しい愛の形

 

映画『神様なんかくそくらえ(2015公開)』を観た。R指定でタイトルもなんとも刺激的な感じだけれども、内容はそれを上回ると思う。しかし、東京国際映画祭でグランプリを受賞するほど評価されている作品だ。
実話をもとにした映画で、ドキュメントとフィクションを混ぜることで、「人生の終わりはどこで、虚構のはじまりはどこか」という虚構と現実の境界を表現した作品だった。

ネタバレ注意です。

舞台はニューヨークだが、自分が知ってるものではなかった。アリエル・ホームズが演じるハーリーは若い女性で薬物中毒のホームレスという難しい役どころだったがリアルで迫力があった。若い女性が主役ということでもちろん話は恋愛が中心に進んでいるはずなのだけれど、周囲の環境が悪く、悪い情報しか入ってこない。途中までこの作品が新しい愛の形を描いたダーク・ロマンスということに気付くことができなかった。

ハーリーが愛するのはケイレブ・ランドリー・ジョーンズが演じるイリヤはハーリーと同じ環境に住むどうしようなくダメな男だった。どこがいいのか分からないがどうしてもイリヤにこだわっている。途中、薬欲しさに売人のマイクと付き合い、奇妙な三角関係になったりするが、状況が状況だけに全然うらやましくない。憧れない恋愛映画はけっこうめずらしい。

監督はジョシュア&ベニー・サフディで兄弟で作品を作っている。この作品は斬新でインパクトがすごく、ダークな世界を描いているのにもかかわらず、どこか美しいものも残している。音楽にこだわりがあるようで冨田勲さんがアレンジすることによって宇宙船で作曲したように聞こえるドヴュッシーの曲がとてもきれいで作品にもぴったりで印象に残る。

そして社会問題も作品の中に組み込んでいるのも特徴なのだけれど、薬物問題はもちろんストリートキッズについてもいろいろ調べていて描いている。たとえばマクドナルドやスターバックスバーガーキングなどのチェーン店や大型書店のトイレ、映画館で時間を潰し、トップ100の音楽を聞き、もろに企業の影響を受けるというのもストーリーの中で出てくる。ちょっといろいろ考えて暗い気持ちになってしまった。意見は様々になるような作品ではあるけれど、愛とヘロインとの間で迷う主人公のダーク・ロマンスは観る価値はあると思う。

 

神様なんかくそくらえ [DVD]

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コメット

映画『コメット(2015年公開)』を観た。主役のデルを演じたジャスティン・ロングとキンバリーを演じたエミー・ロッサムの演技がすばらしかった。SFファンタジーで基本的に主役の二人しか出てこないのだけど演出がすばらしくて二人だけに見えない。二人の6年にわたる恋愛物語が、交錯するパラレルワールドの中で進行していく。

ネタバレ注意です。

『終わりの始まり』がテーマで場面や会話すべてがパズルのようになっていて、観客が自分なりにピースを埋めていくのが新しいと思った。舞台は出会いから遠距離、別れ、再会、再再会とあるが、全部ばらばらに観ることになる。時系列がめちゃくちゃなのにセリフ一つ一つは繋がっていて不思議な感覚を覚える。

そしてデルとキンバリーは惹かれあうのだけれど、いつも真逆のことを言う。例えば、出会いのシーンで「愛を信じるかどうか」で討論になったりキンバリーに対して「君は今を生きる」といい、自分のことを「僕は5分後を生きる」と言ったり、セリフが単純に見えて実は凝っているのがおもしろかった。

最後まで観ないと分からないことが多い。デルは最初に製薬会社の研究員で母親が重いガンであることが分かるけれど、キンバリーの素性がなかなか分からないので会話で推理していくしかない。そこもはらはらして最後まで飽きさせない作りになっている。映像は美しいのだけれど、なぜか狭さを感じる。個室のシーンが多いが部屋の窓から見る景色は無限大で不思議な美しさだった。外の場面もなぜか作られた感じがする。

時間は進んでいるのか、止まっているのか、遡っているのか、映画なのに絵画のような、不思議でしかたない作品だ。

 

COMET コメット [DVD]

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マン・アップ

イギリス映画『マン・アップ/60億分の1のサイテーな恋のはじまり(2016公開)』を観た。イギリス映画はもともと大好きなのでとてもおもしろかった。サイテーとあるが大人のピュアな恋愛映画だ。出会い方が変わっているだけで。

主役のナンシーを演じるレイク・ベルのいきいきとした演技が光っていた。レイク・ベルは過去に『恋するベーカリー』などに出演する女優で監督でもある。そして相手役ジャックを演じたサイモン・ベックがこの作品の製作総指揮をしている。コミカルな演技なのにかっこよかった。サイモン・ペックは過去『ミッション・イン・ポッシブル』に出演しているようだけれど、この作品が似合っていると思った。

ネタバレ注意です。

ナンシーは自分のことを負け犬と思っている34才の独身で絶賛婚活中という役どころだった。友人に男性を紹介されても全然気分が乗らない。家族も心配している。ある日、両親の結婚40周年のパーティーに招かれスピーチをすることになる。両親のいる街へ行くことになるのだけれど、そこに行く電車内である女性に出会う。電話で姉と話しているのを聞かれ、「一方的にかわいそうな女性」と思われて、人生を変える本『60億人とあなた』を薦められる。話せば話すほど合わないその女性に腹が立ち無視して眠っているいる間に女性はいなくなっていて「ここを読んで!」とメモを挟んだその本が自分の手元に置かれていて、返そうと追いかけるも見つからない。この対照的に見える女性とのやりとりもクスッとくる。そして駅の時計の下でキョロキョロしているとジャックに話しかけられる。本が目印のシークレットデートの待ち合わせ場所にいたために人違いをされてしまう。違うと訂正しようと思うが、ジャックが話すテンポに圧倒され、しかもジャックが自分の好きな映画のセリフを偶然口にすることで(ハンニバルレクター博士の「交換条件だよ、クラリス」というセリフがお気に入り)、ナンシーはジャックに合わせてデートしようと決意し、結果的にデート相手を強奪することになる。

途中、ナンシーはボーリング場で身バレしたり、ジャックは別居中の妻とバーで出くわしたりして数時間の間に半ば事故のように二人の距離が近づいていくが、その様子がセリフやダンス、ボーリングなど凝っていない方法で表現されていて脚本がすごいと思った。自分的にはジャックをナンシーがバーのトイレで励ますシーンが一番いいと思った。

作品の舞台はロンドンで街並みを見て楽しむことができるし。作品中ナンシーが街や駅の中を走るシーンがたくさん出てきてスピード感があってかっこいい。異常なほど女子力が低く観客を心配させるナンシーが驚くほどかわいい女性に変化していくところが見ていて微笑ましかった。大人の恋愛を忘れている人にはオススメの作品だと思う。

リザとキツネと恋する死者たち

映画『リザとキツネと恋する死者たち(2016公開)』を観た。ハンガリー映画だ。恋愛映画だと思って観るとちょっと裏切られるかもしれない。ブラックユーモアが利いていてパンチ力があるので注意が必要だ。

ネタバレ注意です。

舞台は1970年代のブダペストで、その街のあるマンションと近くのハンバーガー店(メックバーガー)ぐらいしか出てこない。リザはそこの蟹バーガーが大好きなのでよくそこにいる。
主演のリザ役のモーニカ・バルシャイさんのコミカルな演技が光る。リザは無類の日本好きの看護師という役どころだった。昔の映画でありがちなこれは日本文化の勘違いだと思われるシーンが満載でちょっと笑えるかも知れない。まずリザが大好きな『トミー谷』という歌手がおかしな歌謡曲を歌う。

トミー谷役のディヴィット・サクライさんが魅力的なんだけれど日本語がたどたどしくて聞き取りにくい。聞き取りにくいから余計耳を傾ける不思議な曲に仕上がっている。ちなみに『トミー谷』はリザの妄想の友人だ。作品中ではDOKI DOKI/ dance dance have a good time/out she comes up she goes/leven polkka/forever など映画の為に作られた名曲揃いだ。

さて話の内容はというと、死人がとにかくたくさん出る。
1マルタ 2カーロイ 3ゾルタン 4ルドヴィグ 5フェリー 6ジョバンニ 7煙突掃除人 8ヘンリクというように次々と死人が出ることでストーリーが進行していって、恋愛映画では?と途中心配になるかもしれないが、リザが恋愛をしようと努力するところが同時に描かれているので大丈夫だ。

リザが憧れている架空のファッション誌『cosmopolitan』にまねておしゃれをする場面はかわいかった。映像もカラフルで独特で、個性が強すぎる作品だけれど日本びいきなのも伝わってきておもしろかった。新しいジャンルの映画を見つけた気がする。

 

 

 

久しぶりに読んだ推理小説

小説『麗しのオルタンス』(創元推理文庫)を読んだ。こんなに頭を使って読んだのは久しぶりかもしれない。作者のジャック・ルーボは数学者とあって今まで読んだ推理物と少しテイストが違うと感じた。登場人物がとにかく多くて頭を整理するのが大変だった(アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』のように登場人物が多いけれど、この作品ではいなくなる人はそんなにいません)。

ネタバレ注意です。

街の金物屋をねらう連続事件を追いながらストーリーが展開していく。ブロニャール警部とその部下のアラペートそしてジャーナリストのモルナシエールが協力して犯人の足どりを掴んでいく。この金物屋を襲う事件の内容が思いの外、あまり大した事件でない。夜中の0時に金属の鍋が床に落ちて驚かせるという事件だ。1年ほど続いていて、ララム・ベラン夫妻の店で36回目という設定だった。ブロニャール警部はある規則性を発見し今回の事件を予測していた。(螺旋状にシトワイヤン通り53番地のブロニャール警部の住むアパルトマンに向かっていた。)

この作品でメインとなるのは金物屋の事件だけれど、実はあと4つ事件が隠れている。
1 タイトルになっている、『オルタンス』は哲学専攻の女子大生だ。裕福な家に生まれているが、グロワッシャン夫妻の店でバイトをしている。見た目のせい(とにかく薄着)で男性客が増える。そして色んな男性とつき合うがすぐ離れていくことに悩んでいる。ある日、バス停でモルガンと名乗る男性に「右目が美しい」とほめられ恋をする。偶然図書館で再会して付き合い始めるがそれによって事件に巻き込まれる。
2 ボルデヴィア公国の第一皇位承継者が失踪していてカトリック重鎮が探しに近くの教会に来ている。
3 金物屋の事件から3ヶ月ぐらいあとに洗濯屋が襲われる事件(ぞっとするほど汚れたズボンを完璧かつ即刻洗濯せよと要求、拒むとケンカを売られる)が起こり、近くのバス停で厚着の美しい女子学生キャロルが「左目が美しい」と声をかけられる。
4 アレクサンドル・ウラデミロヴィッチという雄猫が登場し事件の謎に気づいたりするのだけれど雌猫のチューチャがウラデミロヴィッチに恋をすることによってある仕事から離れることになる。
というような内容だ。

登場人物が多いので、作者と共に犯人を絞って行くのが面白いと思う。
頭の体操になるのでオススメだ。

 

麗しのオルタンス (創元推理文庫)

麗しのオルタンス (創元推理文庫)

 

 

 

ミュージアム

最近ちょっと怖い映画にはまってしまって映画『ミュージアム(2016公開)』を観た。小栗旬さんや妻夫木聡さんなど人気の俳優さんが出ているので映画館で観た方も多いかも知れないが、私はちょっと機会を逃してしてしまったので家で観た。家で観た方が結果的に怖かったかもしれない。
同名のコミックが原作で監督は大友啓史さんだ。大友監督の作品はTVでは『竜馬伝』、映画では『るろうに剣心』『秘密』が思い浮かぶ。スピード感のあるかっこいい作品が多い。

ネタバレ注意です。
内容はホラーだった。主人公である刑事である沢村(小栗旬さん)がある連続殺人事件に遭遇し、その事件を追っていくと自分の家族が狙われていることに気づく。そしてある裁判員裁判裁判員に選ばれた人物が殺害されているという共通点が見つかる。殺害方法が残忍過ぎて、直視できない場面が多かった。

犯人がわざと証拠を残すことで連続性規則性が分かっていく。(「ドックフードの刑」「母の痛みを知りましょうの刑」「均等の愛の刑」「ずっと美しくの刑」「針千本飲ますの刑」など書かれた紙切れが必ず現場に置かれている。)そして沢村の妻の遥と息子の将太もついにさらわれて現場には「お仕事見学の刑」と書かれた紙切れが見つかる。沢村は家族が事件に関わってしまったことで事件から外されるのだけど、なぜか逆に犯人が挑発するかのように近づいてくるようになる。犯人と思われる男はいつでもカエルのマスクをつけていて出歩いている。逆に目立つだろうと思ったりしたけれどそれには理由があるという設定だった。

最近、韓国映画で怖い映画を観たばかりだけれどこれも相当怖い。でも見応えは十分なのでおすすめしたい。