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メン・イン・キャット

映画『メン・イン・キャット(2016公開)』を観た。タイトルだけ見ると子供向け?と思ってしまうけれど、アカデミー賞俳優のケビン・スペイシークリストファー・ウォーケンが出演していてかなり本格的で贅沢なコメディだった。

ネタバレ注意です。
名優ケビン・スペイシーが演じるのは〈ファイアーブランド〉という会社のCEOのトム・ブランドという人物でこの人が魅力的だった。仕事人間なのだけれど遊び心いっぱいでスカイダイビングをしたり車もスポーツカーを自ら運転する。航空会社、小売チェーン、電話会社など経営しているが今はタワー建設に夢中で少年のようなこころを持つおじさんだ。北米一の高さの「ファイアーブランドタワー」を建設中でライバル会社の「パラゴンタワー」と高さを争っている。現在同族経営で中には株式公開しよう意見する部下(イアン)もいたりするがワンマン経営で成り立っている。

そんな時、トムの娘が誕生日が近いのでプレゼントに〈猫〉が欲しいと言い出す。あまり〈猫〉が好きでないトムだったが毎年同じプレゼントをせがむ娘についに折れ、猫専門店『パーキンス』に行く。ちょっと普通じゃないペットショップで『グレムリン』を思い出した。そこにいる店主がクリストファー・ウォーケン演じるその名もパーキンスですごくいい。もともと個性的な俳優さんだけど、とにかく気になる。目立つ。なんでも演じることができるんだなあと感心した。そこでフワフワの猫に逆指名されて買って帰る。その帰りに事故が起こり、なんとトムとその猫(エサ皿にちなんでファジーパンツと命名される)の中身が入れ替わってしまうというちょっとSFっぽい話だった。

猫のファジーパンツがかわいい。ずっと見ていたくなる(ロシア産のサイベリアンフォーレスト・キャットという猫種らしい)。演技と明らかにCGのところがあるけどSFと思えば全然気にならない。中身が変わってからはケビン・スペイシーがファジーパンツのナレーションをするのだけれど、おじさんの声とのギャップがかわいい。やっぱりケビン・スペイシーなにやってもうまい。何とか家族に自分がトムであることを知らせる為に猫なりにがんばるところや父親として見えてなかったもの、例えば家族や社員のことが猫目線で初めて理解できたりする場面があってコメディでもちょっと感動してしまった。トムは最初の事故で大半は昏睡状態でその分ファジーパンツが大活躍する。監督のバリー・ソネンフェルドは猫アレルギーらしいので「猫好きによる猫好きのための映画」とは言えないかもしれないけど私はかなり好きになった。

 

 

ガール・オン・ザ・トレイン

映画『ガール・オン・ザ・トレイン(2016公開)』を観た。原作はポーラ・ホーキンスの同名小説でかなりこの映画がおもしろかったので読んでみたいと思った。主演はイギリス出身のエミリー・ブラント(『プラダを着た悪魔』etc)だった。他にもたくさん女優さんが出ている。アメリカの映画で舞台はNY郊外の住宅地だった。

ネタバレ注意です。
三人の女性の訳ありな生活を描いたスリラー映画だ。女性の深層心理を描いていると聞くだけで怖いと思うけれど、タイトルに『トレイン』とあるように電車に主人公が乗っていてある風景を毎日見てそして異変に気づくところから事件に巻き込まれていくという設定がおもしろい。自分も電車に乗るとついつい風景にみとれてしまうことがあるのでこれはありえると思った。

三人の女性が主に登場し、主人公のレイチェルがNYまで通う電車の中でいつも確認する家が2軒ある。一つは自分が理想とする夫婦が住んでいる家でそこにはメガンという女性が住んでいる。このメガンを演じるヘイリー・ベネット(『ラブソングができるまで』『マーリー/世界一おバカな犬が教えてくれたこと』)が美人でセクシー過ぎて一番目立っていた。そしてそのメガンはスコットという夫がいる。そしてもう一軒はアナが住む家で実はその家はレイチェルの元の家だ。なぜかというとアナの夫はレイチェルの元夫だからだ。自分だったら毎日、電車でその風景を見るのはキツイと感じたけれど、絶対その電車に乗らないといけないとなるとやっぱり見てしまうのだろうか?

レイチェルはアナに夫を略奪されたという気持ちがあり未練が残っていて、しかもアル中でどんどんひどくなっていく。記憶がなくなるほど飲んでしまう。そしてその空白の記憶によってとんでもないことになってしまう。理想と思っていたメガンのある光景を電車の中で見てしまい裏切られたと思って電車を降りる。そしてアナへの怒りなどがゴチャゴチャになって偶然アナに会い罵声を浴びせたのだけれど、次に気が付くと自宅アパートにいてしかもあざだらけで頭から出血している。すると自宅に刑事が事情聴取に来てメガンが行方不明になったことを聞く。自分が血だらけになった日とたまたま同日だったので疑われ、まったく記憶がない自分がこわいと思い、断酒を始める。そこから4ヶ月さかのぼりレイチェルの記憶を辿ることでストーリーが展開する。同じように記憶をたどる映画の『メメント』にヒッチコックの『裏窓』をプラスしたような(といってしまうと想像出来過ぎて迷惑かもしれないが)見応え十分な作品だと思う。

 

 

館島

東川篤哉さんの小説『館島(創元推理文庫)』を読んだ。推理小説が好きでいろいろ読んでいるつもりだったけれど、実はそんなに詳しくはないのかもしれない。東川さんの作品を読んだのはこれが初めてだった(原作のドラマは見たことがあるような)が文句なしにおもしろかった。ファンになったのでいろいろ探してみたい。まず最初にタイトルが気になった。『館島』って読み方は?タテジマ?タイガースか?とかいろいろ考えて購入してしまった。

ネタバレ注意です!

作品の舞台は瀬戸内海に浮かぶ小さな島で時代は本州四国連絡橋が完成する直前ぐらいの話だった。この橋をささえる島(横島)に建設された六角館で死体が発見されるところから話ははじまり、本州四国連絡橋の存在がストーリーに大きく関係してくる。そして、死体として発見される十文字和臣という人物が岡山では(岡山だけ)天才として知られる建築家で岡山には数年間住んでいたことがあって、今も実家に帰る時は必ず通る橋が出てきたりするので設定がすごく気に入った。瀬戸大橋が架かる前のことはあまり知らなかったのでそのいきさつ(〈島〉と〈橋〉、〈島の住民〉と〈公団〉の関係)なども詳しく描かれていて勉強になった。

十文字和臣は「十文字工務店」の経営者であると同時に一流の建築家でもある。設計した建築物は「中国総和銀行本店」「倉敷市民音楽堂」「岡山青果市場ピーチドーム」「甲子園第二球場」があるという設定で小説の中だけの建物なのだけれどありそうなものばかりでちょっと笑ってしまった。東川さんの作品はユーモアにあふれているので、ところどころくすっときてしまう。その十文字和臣が自分の為に瀬戸内海に浮かぶ横島の西側に土地を買い六角形の館(六角形の奇抜な外観で色はシルバー近未来的リゾートホテルと表現されている)を別荘として建てていて、その建物の中央に螺旋階段がありその1階で発見されるのだけれど死因が転落死ではなく墜落死だという。つまり螺旋階段ではなく別のどこかのもっと高いところから落ちたけれどそれがどこか分からない、これが一番の謎だ。結局この事件は未解決のまま半年がすぎその館に関係者が呼ばれて新たな事件に巻き込まれていくという王道推理小説だ。

昔読んだ綾辻行人さんの『十角館の殺人』やアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を思い出すが、より身近に感じた。下津井港とか下津井電鉄などなんか聞いたことがある名前が出てくるからかもしれない。
島に呼ばれる登場人物がユニークなのも見所だ。刑事と探偵の仲がいいのか悪いのか分からないやりとりがかわいい。発端になった和臣が地元の名士でいろんな黒い噂があったり、美女も登場しその美女を奪い合う男性がいたりして事件の動機を推理するのがおもしろかった。
この作品を読んで橋や島の印象が少し変わったので次通るときには今までと違う見方ができるかもしれない。

 

館島 (創元推理文庫)

館島 (創元推理文庫)

 

 

 

 

5to7

映画『5時から7時の恋人カンケイ(2016公開)』を観た。出演はロシア出身のアントン・イェルチンとフランス出身のベレニス・マーロウでこの二人が恋人を演じる。舞台はNYマンハッタンでとても都会的だ。

ネタバレ注意です。

アントンが演じるのは若手の小説家のブライアンでベレニスはNYに住むパリジェンヌで外交官の夫と二人のかわいい子供持つセレブな人妻のアリエルという役を演じている。ざっくり言うと不倫を描いた映画だ。しかしドロドロしたところはまったくなくて不思議なラブストーリーだった。ブライアンが街でアリエルに一目惚れしてしまい話は始まる。いかにも外国から来ましたとういう見た目とフランス訛りに惹かれてしまいデートを約束する。「5時から7時までなら時間があるよ」と時間指定される。「5to7」がフランスでは不倫を意味することに気づかずに約束してしまい交際は断ろうとするが、「信頼の始まりだったのに」といまいち意味が分からないこと言われて結局付き合ってしまう。

基本的に会うのは高級ホテルの一室でルールは「5to7」だけで自由だ。これが不思議に感じる一番の理由で、アリエルの夫に街で急に話しかけられてホームパーティに呼ばれたり、二人の子供(マークとエロディでブライアンにすごく懐いてしまう)やセレブな友人たち、そして夫の愛人のジェーン(出版社の編集者)までいたりととにかくフランクでオープンで意味が分からなかった。同じ立場のジェーンにこの関係について疑問に思わないのかと尋ねるほど最初はブライアンは不安になる(ジェーンには「フルスイングしろ」と励まされたりする)のだけれど、知り合いになる人は指揮者(マエストロ)など著名人だし考えてみればジェーンも出版関係の仕事をしているので悪いことばかりではないので、奇妙な家族付き合いを続けてしまう。

そして運も巡ってきてブライアンの小説が新人賞と賞金6000ドルを獲得、そしてジェーンの上司にも紹介されて連載の仕事も入ってきたりして生活が変わっていくが心はなぜか満たされない。ここから少しずつアリエルとの関係が変わっていく。個人的にはジェーン役のオリビア・サールビーがかわいくていいと思った(ブライアンの本が店頭に並ぶのを自分のことのように喜ぶ場面がキュート)。なぜアリエルがフランクに不倫関係をするのかとか数年後の様子まで細かく描かれているのでそこは是非作品で観ていただきたい。

 

5時から7時の恋人カンケイ [DVD]

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CITIZENFOUR

シチズンフォー/スノーデンの暴露(2016公開)』を観た。スノーデンとは元CIA職員のエドワード・スノーデンのことで、他にもオリバーストーン監督の映画『スノーデン』もあるけれど、こちらはドキュメンタリー映画の方だ。監督はローラ・ポイトラスで9.11以降のアメリカを描いた3部作の最後の作品のようだ。

ネタバレ注意です。
2012年に監督のローラ宛に匿名のメールが届きそれが、「あなたはNSA(米国国家安全保障局)の監視対象になっています」という内容でそれがきっかけで香港に滞在するスノーデン氏にインタビューし作品を作成するきっかけになる。しかもローラの協力者に英国のガーディアン紙に所属のグレン氏を指名してくる。NSAはインターネット9社のサーバーに直接侵入することができて何の嫌疑もなく情報を収集監視できるとかCIAではドローンからの映像がいつも流されているとか企業の協力を得て通話記録が得られるなど国民のプライバシーの侵害が疑われることばかりで穏やかではない。

それをガーディアン紙は取材し報道する。最初は匿名だったのだけれど、個人を特定しようする動きが活発になり、結局スノーデンは実名で内部告発をすることになる。「知的自由を守りたい。それが人々に貢献していると思っている。」と告発の動機を語る場面がある。マスコミにも顔出しをしてそれに賛同する人物が多くなり大きな反響がある。そしてNSA基地局が米国以外にもあるために世界レベルで問題になる。例えばすべてのドローンがは実はドイツから飛行しているとかベルギーのインターネット会社『ラヴァビット』ではNSAの監視システムに協力したくないので会社を閉鎖したり、そしてスノーデン氏から指名を受けたガーディアン紙は英国政府の圧力を受け一部情報の破棄をさせられるようになったり、グレンの仕事のパートナーが空港で拘束を受けたりといろんな弊害がでるようになる。

一方スノーデン氏は米国から情報漏洩で訴えられ亡命してなんとか生活しているのだけれど、作品の最後でふと疑問に思う(観客に問いかけるような作り方をしているのかも知れないけれど)。英国が事件に関わったことで米国だけでは分からなかった協力企業が判明したり、スノーデン氏に触発された正義感に溢れる情報提供者が確実に監視対象に加えられていることに気づかされる。見終える頃には内部告発者とはスノーデン氏とはどんな存在なのか不可解に思えてしかたなかった。

 

 

ある天文学者の恋文

映画『ある天文学者の恋文(2016公開)』を観た。イタリア映画で監督は『ニュー・シネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』『鑑定士と顔のない依頼人』などたくさんの名作を手がけている名匠と呼ばれるジュゼッペ・トルナトーレだった。この作品もジュゼッペ監督らしい素敵な作品だった。出演はジェレミー・アイアンズオルガ・キュリレンコで二人は訳ありの恋人という役どころだった。ミステリーでありながら少しSFっぽく基本はラブストーリーで大好きなジャンルの話だった。

最近ジェレミー・アイアンズの作品をよく観ているような気がするけれど、今回の役はエドワード・フィーラム(エド)という著名な天文学者の役だった。そしてオルガが演じるのはエドの大学の教え子で6年付き合っている恋人のエイミーで、エイミーは学生とスタントマン(エドはカミカゼと呼んでいる)という二つの顔を持つ女性でそのギャップに驚いた。エドはロマンティストでサプライズ好きで仕事柄論理で愛を語ったり、遠距離恋愛と不倫関係の穴埋めにオルガの行動を先読みして動画や手紙、花束などを送って望みを叶えるのだけれどそれがスマートでかっこいい。口癖は「10人のエイミー、10人のエド」で関係は複雑だけどエドとエイミーは幸せそうだ。

ある日、大学の講義の最中にエドの訃報を聞く。3日前に亡くなったはずなのにメールや届け物は引き続き送ってこられてエイミーは動揺する。いてもたってもいられなくなりエドの家のあるエディンバラに行ったりしてエドが本当に亡くなったのか死因は何かなど調べはじめる。その間にもエドからの連絡が続き勉強やスタントの仕事に身が入らない。その様子がせつなくて苦しかった。

ひたすらエドについて謎解きをしてストーリーは進行するのだけれど、その背景がとても美しい。毎年エドの誕生日に二人で行っていた風景がきれいな島に滞在したり、エドの仕事柄最後に研究していた『超新星爆発の残骸のかに星雲』を望遠鏡で見たりする。謎解きなのであまり内容には触れたくないが、作品の最後には涙が止まらなかった。久しぶりにラブストーリーで感動した。 

 

Pからのメッセージ〈flaske post fra P〉

映画『特捜部Q/Pからのメッセージ(2016公開)』を観た。デンマーク・ドイツ・スウェーデンノルウェー合作のスケールの大きい映画だ。原作は同名の大ヒット小説で特にこの『Pからのメッセージ/ユッシ・エーズラ・オールスン著』は北欧の文学賞『ガラスの鍵賞』を受賞しているようで、とてもおもしろかった。実は原作も映画も以前からすごく気になっていたけれど、観たのはこれが初めてだった。

ネタバレ注意です。
主役の刑事カール(ニコライ・リー・コス)のキャラクターがとても好きになった。仕事人間で勘が鋭いが、繊細で心に傷を負っていてふと涙を流すときがあったりと人間臭くてかっこいい。そして無神論者であるカールが今回の事件では宗教と深い関係があると思われる誘拐事件に挑む。作品の冒頭でカールが所属する特捜部Qにある仕事が持ち込まれて海に流れ着いたボトルの中に入った手紙の解読をすることになる。それを調べると血痕がいたるところに着いていて、監禁されていて助けを求める内容に見える。確かなのは差出人の『P』、子供であること8年ほど前に書かれたものであるぐらいでそこから失踪した子供を探すことになる。小学校である兄弟が行方不明になっていることをつきとめることができる。そんな矢先にこの事件にそっくりな事件が起きる。その行方不明になった場所がある宗教の〈神の弟子〉という教区に近くその信者の姉弟が誘拐されて、なぜか親は誘拐があったことを隠している。熱心なカールとその相棒のアサドの説得で犯人から連絡があり身代金の受渡を要求されていることを聞く。

この作品のおもしろいところは最初から犯人が分かっているのだけれど動機やらその人物像など不可思議でもやもやして見終わるまで謎が解けないところだ。アクションも見所のひとつで、身代金の受け渡しのシーンではありとあらゆる乗り物を使っていてスピード感があって迫力がある。そしてカール自身も犯人の標的になったりして緊張感がある。絶体絶命な場面で最初に関わった8年前の事件の証言〈連続的な音〉が事件解決の鍵になったりと最初から最後まで台詞のを聞き逃すことはできない。なぜカールが心に傷を負っているのかいまいち分からない部分もあったので、映画のシリーズの他二作『特捜部Q/檻の中の女』『特捜部Q/キジ殺し』も(書籍も)また観てみようと思う。