半分の月がのぼる空

世間では成人式だ。すっかり、20才ぐらいの頃の気持ちを忘れてしまったかも、と思い心がきれいになりそうな映画が観たかったので『半分の月がのぼる空』を観た。2009年公開の作品でよく知らなかったが、とてもよかった。純粋な恋愛映画だ。

ネタバレ注意です。

主人公のユウイチとリカは病院で知り合いになる。高校生の設定だ。ユウイチは肝炎で入院していて、リカは重い心臓病でできるだけ長く生きる為に高度な手術が必要だ。

作品の中でリカが母親への気持ちと手術を決心することを語るところはリカの愛読書である宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のジョバンニとカムパネルラの台詞を使い、ユウイチとできるだけながく一緒にいたいと伝えるところはユウイチの通う高校の演劇部の舞台の『リチャード王』の王女の台詞を使う。そして、ユウイチの退院が決まり、リカは手術の為に別の病院に転院する決心をして、一緒に生きるために戦うことを約束するシーンでは、まるで『ロミオとジュリエット』ワンシーンのようにリカがユウイチの病室を訪れる。とにかく情景が文学的で美しい。

ユウイチ池松壮亮さん、リカは忽那汐里さんが演じているがとても自然な演技ではまり役だったと思う。原作はライトノベルのようだが、読んだことはないのでまた機会があれば探してみたいと思う。

今まで観てきた映画でも似たような設定の映画はいくつか思い当たる。昔では『世界の中心で、愛をさけぶ』や最近では『orange』も生きることをテーマにしていた。この『半分の月がのぼる空』では同じテーマでも映画の後半で観客をあっと驚かす展開で生きるために戦った軌跡を描いているのが他と違うところだ。『orange』でもパラレルワールドの中で戦うようなところがあったが、それとは全くちがった印象を受けた。

病院が舞台で看護師さんとの温かい交流があったりするが(ユウイチが時々無断で外出するので濱田マリさん演じる看護師のアキコさんによく叱られたり追っかけられているが基本的に仲良しだ)、自分も入院した経験がわりとあるので懐かしかった。小さいときに私もユウイチと同じように看護師さんに追いかけられて、逃亡先で薬剤師さんに話を聞いてもらって、その後、捕まりひどく師長さんに叱られた記憶がうっすら残っている。

題名の一部である『半分の月』はこれから満ちて行く月で『リチャード王』の台詞では『生きる』ことを暗示している。重いテーマながらも恋愛や親子関係を爽やかに描いている作品だった。すごく気に入ってしまったので2回観て2回とも同じところで涙した。オススメなので是非興味を持たれた方に観ていただきたい。少し、気持ちが若返ります。