art and craft

映画『美術館を手玉にとった男(2015公開)』を観た。
アメリカで実際にあった事件の関係者を追ったドキュメンタリー映画だ。全米の20州46の美術館が被害にあった贋作の絵画を美術館に寄贈した事件の贋作の作者マーク・ランディスが主役として出演している。その他、最初に贋作に気付いたシンシナシティ美術館のチーフレジストラーのレイニンガー、シンシナティ大学のコーワン、FBI捜査官ウィットマン、騙された各美術館職員などの証言で話が進行していくのだけれど、ランディスが自分を語るところは凝った映像になっていた。例えば、好きなTV番組、ヒーロー、映画などはコメントに合わせてその作品がちょっと見られておしゃれな感じがした。それでランディスの人柄や贋作についての考え方がすこしづつ分かってくる。

ネタバレ注意です。

まず、レイニンガーが贋作と見抜き追跡することになるのだけれど、その理由がすごかった。「全て本物に見える。すごい男だ。仕事で向こうから近づいてきてスイッチが入った。」とコメントしていた。贋作を押しつけられて腹もたっているけれど、どうしても追いかけてしまうという。映画の観客としてランディスに興味がわく。

色んな人の証言から、いつも小さな嘘をつき寄贈して、単純に贋作製作が好きで、美術館に作品が並べたいだけの人のようだということが分かってくる。本人も「世代を越えた慈善活動だ。」と言っている場面がある。たまに神父の仮装をして出歩いたりしていてちょっと変わっているけれど結果としてこの事件でランディスは逮捕はされていないようだ。
新聞や雑誌に出て有名になっても、心配しているのは美術館に出入り禁止になるのではないかということだけだった。

作品の最後に、ランディスの個展が開かれることになるのだけれど、テーマは「対比」で「単なる盗作との違い、過去の贋作と対比させる」ために開かれて、ランディスがゲストに呼ばれるシーンはレイニンガーと対面するところがあるのでやりとりがちょっと面白かった。

「額面通りに物事を受け取るな。美術館はだまされた。」とか「自分の行為が及ぼす影響を理解しているのか」ということを関係者が証言するのだけれど、ランディスにというより観客に伝えているような気がして作品にぐっと引き込まれた。
本物にしか見えない贋作が話の骨子になっていて、たくさん美術館も出てくるし(早足だけど)絵画が好きな人には新しい感じがしてオススメだと思う。