江戸川乱歩お気に入りの推理小説

トレント最後の事件(E・C・ベントリー著/創元推理文庫)』を読んだ。原題は『TRENTS LAST CASE』で1913年に発表された作品だ。書店で本の帯に一目惚れして買ってしまった。「乱歩が惚れた大傑作」とあればつい手にしてしまう。この「トレント最後の事件」とあるけれど、ベントリーが書いた最初の推理小説だ。主人公のトレントは画家だが、レコード新聞社のモロイからたまに依頼をうけて趣味で探偵のようなことをしている。古典と言われる作品ってこういう設定が多いのかもしれないけど、趣味で探偵をして記事に貢献するとかいう話には興奮する。

ネタバレ注意です。

話の内容はアメリカ実業界で巨人やらウォール街のナポレオンみたいに表現される大物のシグズビー・マンダースンがイギリスのマールストンにあるホワイト・ゲーブルズ邸で射殺される事件が起きて、業界やら町やらに激震がはしるところから始まる。謎が多かった為、例によってモロイからトレントは調査を依頼されて屋敷に行くことになる。そこで出会ったシグズビーの妻のメイベルがあまり美しくて探偵というより画家の感性の方が前に出てしまい恋心を抱いてしまう箇所がある。そこを乱歩は気に入ったのかなと思った。

登場人物が次々現れるが、全員怪しい。マンダースンがかなりのお金持ちで仕事にしか興味がなく、あまり人から好かれる体質でないので容疑者は必然的に多くなる。誰も悲しんでないのが逆に気になる。例えば執事のマーティンが全然物音を聞いてないと言ったりフランス人の女中セレスティーヌは露骨に悪口を言う。秘書はイギリス人のマーローとアメリカ人のバナーがいて、対照的な二人だ。マンダースンが亡くなる前にマーローの話をしていたり、バナーはバナーでマンダースンが命を狙われているような話をしていたと証言したりと何か知ってそうな感じもする。後はマンダースン夫人の叔父で偶然にもトレントの知人であるカプルズやロンドン警視庁の警部のマーチなど出てくる。屋敷の敷地内で起こり、遺体の衣服は乱れているところとそうでないところがあり争ったあとの傷、なぜか義歯を入れ忘れているところ、最後に夫人と交わした会話、執事の証言が争点だろうか?物語の前半でトレントが名推理で大体の人物像を当てはめる箇所はすごくおもしろいが、半分以上ページ数が残っているのでもちろん二転三転の結果は期待できる。この作品を読んだ乱歩が「わたし流」をこころみた作品もあるようなので探して読んでみたくなった。

 

トレント最後の事件【新版】 (創元推理文庫)

トレント最後の事件【新版】 (創元推理文庫)