館島

東川篤哉さんの小説『館島(創元推理文庫)』を読んだ。推理小説が好きでいろいろ読んでいるつもりだったけれど、実はそんなに詳しくはないのかもしれない。東川さんの作品を読んだのはこれが初めてだった(原作のドラマは見たことがあるような)が文句なしにおもしろかった。ファンになったのでいろいろ探してみたい。まず最初にタイトルが気になった。『館島』って読み方は?タテジマ?タイガースか?とかいろいろ考えて購入してしまった。

ネタバレ注意です!

作品の舞台は瀬戸内海に浮かぶ小さな島で時代は本州四国連絡橋が完成する直前ぐらいの話だった。この橋をささえる島(横島)に建設された六角館で死体が発見されるところから話ははじまり、本州四国連絡橋の存在がストーリーに大きく関係してくる。そして、死体として発見される十文字和臣という人物が岡山では(岡山だけ)天才として知られる建築家で岡山には数年間住んでいたことがあって、今も実家に帰る時は必ず通る橋が出てきたりするので設定がすごく気に入った。瀬戸大橋が架かる前のことはあまり知らなかったのでそのいきさつ(〈島〉と〈橋〉、〈島の住民〉と〈公団〉の関係)なども詳しく描かれていて勉強になった。

十文字和臣は「十文字工務店」の経営者であると同時に一流の建築家でもある。設計した建築物は「中国総和銀行本店」「倉敷市民音楽堂」「岡山青果市場ピーチドーム」「甲子園第二球場」があるという設定で小説の中だけの建物なのだけれどありそうなものばかりでちょっと笑ってしまった。東川さんの作品はユーモアにあふれているので、ところどころくすっときてしまう。その十文字和臣が自分の為に瀬戸内海に浮かぶ横島の西側に土地を買い六角形の館(六角形の奇抜な外観で色はシルバー近未来的リゾートホテルと表現されている)を別荘として建てていて、その建物の中央に螺旋階段がありその1階で発見されるのだけれど死因が転落死ではなく墜落死だという。つまり螺旋階段ではなく別のどこかのもっと高いところから落ちたけれどそれがどこか分からない、これが一番の謎だ。結局この事件は未解決のまま半年がすぎその館に関係者が呼ばれて新たな事件に巻き込まれていくという王道推理小説だ。

昔読んだ綾辻行人さんの『十角館の殺人』やアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を思い出すが、より身近に感じた。下津井港とか下津井電鉄などなんか聞いたことがある名前が出てくるからかもしれない。
島に呼ばれる登場人物がユニークなのも見所だ。刑事と探偵の仲がいいのか悪いのか分からないやりとりがかわいい。発端になった和臣が地元の名士でいろんな黒い噂があったり、美女も登場しその美女を奪い合う男性がいたりして事件の動機を推理するのがおもしろかった。
この作品を読んで橋や島の印象が少し変わったので次通るときには今までと違う見方ができるかもしれない。

 

館島 (創元推理文庫)

館島 (創元推理文庫)