風呂ソムリエ

青木祐子さんの『風呂ソムリエ/天天コーポレーション入浴剤開発室(集英社オレンジ文庫)』を読んだ。サブタイトルの『天天コーポレーション』という化粧品や入浴剤などを販売している会社が舞台の話でそこで働く社員の仕事の葛藤や恋愛がおもしろく描かれている。全部で3話の短編集で話ごとに主人公が変わっていく。

ネタバレ注意です。

〈それは恋するピンクの湯〉では天天コーポレーション研究所の受付で働くゆいみが主人公だった。ゆいみはI市さくらら市で一人暮らしをしている。一番の趣味は入浴で毎週末にスーパー銭湯『藍の湯』に通っている。常連になってそこで知り合いができるほどだ。私は温泉が好きだけれどあまりスーパー銭湯には行かないので、ものすごくスーパー銭湯を詳しく描いていておもしろいと思った。その『藍の湯』の中に天天コーポレーションが開発した入浴剤を試せる湯があって、それが日替わりで『ピーナッツの湯』だったり『メロンの湯』だったり『苺の湯』だったりするのだけれど、その『苺の湯』の日にたまたまその場にいた鏡美月に会う。鏡美月が天天コーポレーションの開発室の社員でまさに入浴剤研究の担当だった為ゆいみと仲良くなる。この美月がかわいい。まさに理系の女子という感じで美人なのに女の子らしいところがなくて(かわいいメジャーなキャラクターよりガラッパという河童が好き)、『恋する入浴剤』を開発したいのに女子の気持ちが分からず、受付嬢でかわいいゆいみに開発の手助けを頼んだりする。それもおもしろい。

ゆいみは派遣社員の受付なのに大好きな入浴剤の開発の補助に抜擢されるのだけど、実際はあまりない(契約上職務内容の縛りが多分あるはず)ことなので夢があっていいなと思った。そしてその研究員である美月に目をかける本社の営業部課長であり天天コーポレーションの御曹司の円城格馬が開発室にいつも出入りしていて上下関係なく接している。しかも研究のために風呂にも入るような裸の付き合いだ。(美月はちなみにいつも白衣の下に水着を着用している)これも普通はあんまりない。だからフィクションとしてはすごくおもしろい。

〈薔薇の香りで絵を描く〉では美月目線の話で薔薇の入浴剤を開発するにあたっての調香について主に描いていて、香りに興味があるのでこんな仕事もいいなあと思った。そして、美月と格馬の恋愛についてもすこし触れていて恋愛小説としても楽しめる。

〈幻の温泉を求めて〉では美月、格馬、ゆいみの三人の目線で、美月と格馬の出会い(天指桃源温泉で出会う)やゆいみの元彼の高志との恋愛が主な内容で、美月が一番やりたかった仕事などについての内容で、前2話での謎が全部分かるようになっている。
すごく読みやすくてすっかり青木祐子さんのファンになってしまったのだけれど、どうやら『これは経費で落ちません/経理部の森若さん(集英社オレンジ文庫)』の姉妹編だったようなのでこちらも読んでみたいと思った。