裁かれるは善人のみ

映画『裁かれるは善人のみ(2015年公開)』を観た。ロシア映画で監督は『父、帰る』『エレナの惑い』『ヴェラの祈り』のアンドレイ・ズビャギンツェフだった。どれも評価の高い作品らしいが私は観たことはない。この作品も例外なく評価を獲ているようでゴールデングローブ賞アカデミー賞カンヌ国際映画祭をはじめ数々の賞にノミネートされたりを受賞している。残念ながらキャストもロシアやポーランド出身の俳優さんばかりだったので知らなかった。

ネタバレ注意です。

舞台はロシアのある海辺の田舎町だった。私も海があるところで育ったけれど、そことは真逆の雪深い町で自分には絶対に合わなさそうで話の内容も明るい話では全然ないのでストーリーの背景にはぴったりあっていたと思う。娯楽がなく子供は崩れた教会跡地に集まってただ話すだけだったり、大人も家族で射的をしに遠方に出かけたりして、ふつうに銃を子供に見せたりするのが文化の違いかと奇妙に感じてしまった。

主に自動車修理の仕事をしているコーリァとその妻リリア、コーリァと前妻の子供のロマの三人家族を描いていた。リリアは夫が起きる前から魚の加工工場で働き、血のつながらない思春期のロマとはうまくいってなかったりして女性としての幸せについても考える場面があった。コーリァは市と土地収用でもめて裁判中でそこにモスクワに住む友人で弁護士のドミトリーが来て一緒に三代続いてきた土地を守るべく戦うのだけれど、またこの町の政治が腐敗していて常識が通用しない。多分誰が見てもいらいらすると思う。まず市長が汚職にまみれている上に、立ち退きをしないコーリァに堂々といやがらせをする。それに対して不法侵入で告訴しようとするも警察、検察、裁判所が結託して告訴状を受理せず、それどころか警察で因縁をつけられてコーリァが勾留されたりする。

ああこれがタイトルの所以かと思うのだけれど、その後目には目をとばかりに弁護士であるドミトリーは汚職の件やモスクワの有力者の名前を出して市長と裏で取引をしようとしたり、コーリァの友人も実は汚職警官だったりして、その他にも宗教と政治の癒着などの問題などいろいろあって『善人』とは一体どういう人をいうのかが分からなくなってくる。タイトル(ちなみに原題は『Leviathan』で聖書でいうところの海にすむ巨大な怪獣)に当てはめて考えれば考えるほど不思議に感じる映画だった。

 

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