チマチマ記

長野まゆみさんの『チマチマ記(講談社文庫)』を読んだ。長野さんといえば『少年アリス』『冥途あり』などたくさんの作品がある。私はこの作品が初めてだったけれどすごくかわいくて個性的で好きになった。

ネタバレ注意です。

〈1early spring朝ごはん〉〈2spring 昼ごはん〉〈3early summer 飲茶パーティー〉〈4summer ちびっこたちの昼ごはん&おやつ〉〈5autumn ピクニック〉〈6late autumn 香ばしいごちそう〈7early winterおたのしみ会〉8mid winter 冬ごもりのマキ〉の7章の短編でそれぞれ季節と食事会のタイトルがつけられていて、その食事会に出された料理のメニューがサブタイトルになっている。なんともお腹がすいてしまう。

主人公は猫の兄弟のチマキとノリマキでチマキの方が猫目線である家族のことについて『チマチマ記』を書きながらストーリーが展開する。この『チマチマ記』というのは飼い主である宝来家のおかあさん宝来小巻さんが『コマコマ記』というコラムを雑貨屋さんのフリーペーパーに掲載しているので、それをマネして自分も『チマチマ記』を書いてみることにするのだけれど、『コマコマ記』が基本的にグルメ記事が多いこととチマキの行動範囲が家の中(とくにキッチン)とご近所食事会へ連れって行ってもらうことぐらいなので食べ物と家族とお客さんのこと中心で極めて狭い世界を描いている。猫目線で考えるとこれが世界の全てになるのかなと思って楽しく読めた。

そしてこの家族というのが大家族で10人以上登場する(一人は幽霊のジャン・ポール)。

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宝来家5人とその中の樹(いつき)と結婚した桜川カホルを始めとする桜川家の人、宝来圭(故人)の前妻のマダム日奈子までもがこの宝来家に出入りしていて、フリーペーパーを発行している雑貨屋のテコナさんとその家族もよく来てチマキとノリマキをかわいがっている。だから行動範囲は狭いのだけど全然話は尽きない。この家族がちょっと変わっているせいもある。

小巻さんは翻訳家のかたわらに、『コマコマ記』も書いたりして執筆業が忙しいのは分かるのだけれど、料理のことを書くわりに料理は全然しなくて息子の宝来鏡がまかないとして料理を全部やっている。しかも、「これを書くからこの料理を作ってね」みたいな提案をしていて、それは家族と関係者だけが知っていてイメージがあるからと公には秘密にしていたり、小巻さんの亡くなった夫の前妻がこの家に出入りしているのもよく考えれば不思議なんだけれど、チマキもノリマキもどこかドライだけれど基本暖かい目で見ていて表現がかわいい。いろいろあるのだなと大らかな気持ちになった。チマキの弟のノリマキが子猫らしい遊びをしているところも『チマチマ記』に兄目線で書いているところも微笑ましくて、7章あっと言う間に読み終わってしまった。猫好きにはオススメの一冊だと思う。

 

チマチマ記 (講談社文庫)

チマチマ記 (講談社文庫)