ベストセラー

映画『ベストセラー/編集者パーキンスに捧ぐ(2016年公開)』を観た。イギリス・アメリカ合作の作品で監督はマイケル・グランデージだった。出演者はコリン・ファースジュード・ロウニコール・キッドマン、ガイ・スピアーズ、ローラ・リニーなど誰が主役といってもいいような豪華さだった。原題は『Genius』でタイトルそのままに二人の天才を描いた実話を元にした作品だった。

ネタバレ注意です。

二人の天才というのはチャールズ・スクリブナーズ・サンズ社の敏腕編集者のマックスウェル・パーキンスと37歳という若さで亡くなった作家トマス・ウルフの二人のことで、マックスウェルはヘミングウェイの『老人と海』、フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』などの編集をした人だ。誰もが一度は耳した世界的に有名な作品だ。トマス・ウルフの代表作は『天使を故郷を見よ』『時と川について』などがあるがこの映画の中でもその作品ができあがるまでが詳しく描かれていてアメリカ文学が好きな人はすごくおもしろく感じるかもしれない。あとジュード・ロウがウルフに見た目そっくりに役作りをしていて驚いた。

ベストセラーを書いた小説家とその編集者というだけで天才と呼ばれるのは当たり前のような気がするけれど、ウルフはマックスウェルに出会うまで、誰からも相手にされず一銭の価値もない小説家だと言われていてデビューまでスムーズだったわけではないので、ただの天才ではないと思った。ウルフは大作が得意で長編が長すぎて編集者泣かせなところがある。一般人的な考えからすると長編を書くこと自体才能があると思ってしまうのだけれどそれが長すぎるなんて天才にしかできないことだ感じた。そしてマックスウェルは敏腕で売れっ子の編集者であるにも関わらず、この長すぎる小説を自分のプライベートの時間を削ってまで読む。さらにいらない文章を削ることでかなり良くなると感じる想像力に優れている人で、これもまた文章を読む天才だと思った。

この天才が仕事でタッグを組むことでおもしろいように本が売れるのだけど、お互いの才能に陶酔してしまい、家庭不和(マックスウェルの妻をローラ・リニーが演じている)になったり恋人(ウルフの恋人をニコール・キッドマンが演じている)と不仲になったりいろいろある。「文章を削除されることは血が流れることだ」といってウルフとマックスウェルが対立するシーンがたくさんあって、これが一番のテーマになっていると自分は思った。マックスウェルの方が悩むこと多くて、削除する立場とされる立場どっちがしんどいのかちょっと考えてしまった。

出演者の中で一番コリン・ファースが好きなのでマックスウェルばかり注目して見てしまい、マックスウェルはどの場面でも帽子を脱がないことに気付いた。家でも職場でも、外でも中でも。それが1カ所だけ帽子を脱ぐシーンがあって、そこで帽子をかぶっている理由がなんとなく分かる。理由を探しながら観るのもおもしろいと思う。