ファブリックの女王

映画『ファブリックの女王(2016年公開)』を観た。フィンランドの映画だった。監督はヨールン・ドンネルで政治家、作家、映画評論家の顔を持つマルチな天才だ。過去の作品では日本で公開された『愛する』などがありヴェネツィア国際映画祭で女優賞を獲得している。
この作品は世界的に有名なブランド『marimekko』の創始者のアルミ・ラティアの半生を描いている。アルミは1979年に亡くなっていて、正直そんな昔からあるブランドだと知らなかった。昨日も偶然『marimekko』を扱う店でセールを覗いてきたばかりで、毎シーズンかわいいプリントが出ていてとても新しい感じがする。

ネタバレ注意です。

映画の冒頭で主演のミンナ・ハープキュラが「今からアルミを演じる」と語る。そしてそこからは舞台で劇団の俳優がアルミとその周囲の人間を演じる劇中劇でストーリーが展開する。アルミはその時どんな気持ちだっただろうと劇作家と俳優が話し合い、演技をやり直すようなところも見ることができて映画で舞台と舞台裏を同時に観ることができてとても贅沢な仕上がりだった。もともとヨールン監督は『marimekko』の役員でありアルミとも友人であったので劇中劇にすることによって人間性を表現している。
確かに一見華やかに見える世界の裏側を重点的にそしてアルミの性格も詳しく描かれていたように思う。ちょっと見方が変わってしまったけれど。

アルミはもともと広告代理店で働いていたが解雇されて、夫のヴィリオの繊維工場で働き始める。ちょうど、アメリカからフィンランドに生地の輸入されることが決まり、夫は市場を奪われると悩んでいたときに、アルミがデザイナーが自由な発想の柄を考えてそれをプリントすることを思いつき『marimekko』が誕生する。正真正銘の創始者だ。そしてダイナミックでおしゃれな柄をうまく見せる為にドレスにして発表する。するとあっという間に有名になってある程度事業が軌道にのる。しかし、アルミは理性的でないところがあって、経営ではいくつか失敗してしまい経営陣ともうまくいかなかった。反面、人間的には優しいところがあって特に女性の従業員のことをよく考えていた人だった。財政難になって実現できなかったけれど、会社員が助け合って生きることができるユートピアmarimekko村』たる構想もあったようだ(ポルボォー近郊の避暑地のボーカルスというところが気にいって建設を考えていた)。

この映画に『marimekko』はスポンサーとして関わってはいないようだけれど、特別上映会をしたり、衣装提供をしているようで、登場人物の衣装を見るのが楽しかった。どんなに暗いシーンでも華やかでかわいい服を纏っているのでそこまで悲観的にならなかった。生地の柄にはそういう効果があると改めて感じた。ドキュメンタリーでアルミ・ラティアは田舎出身(カレリアという街)で自分のことを〈行商人だ、口の悪いカレリア婆だ〉とユーモアたっぷりに言ったりしているけれど、〈古いものが新しいんだ〉という哲学が今でも受け継がれて売れ続けているのを見ると、やっぱり天才であることは間違いないと思った。