七つの会議

池井戸潤さんの『七つの会議(集英社文庫)』を読んだ。大人気の作家さんで映像化されたものはいくつか観たことがあるけれど小説で読むのは実は初めてだった。私は観ていないのだけれどこの作品もドラマ化されているようだ。ドラマなどを観る限り色んな銀行や町工場など職場を詳しく描いたものが多くて文章で読むのは難しいのかなと勝手に思っていた。この『七つの会議』は会議とタイトルにあるようにこれもいくつか職場が出てくる。ソニックという大手総合電機メーカーの子会社の東京建電が主な舞台で登場人物も主にそこの会社員だ。『下町ロケット』や半沢直樹の原作の『オレたち花のバブル組』に登場する職場よりはもっとイメージが沸きそうだと感じたのですごく読みたくなった。読んでみると長編とも短編とも思えるような構成になっていた。全8話あって、それぞれ部署のちがう人物が主役として登場し会議をする場面がある。

ネタバレ注意です。

〈第1話の居眠り八角〉では営業部が舞台で2課に所属する課長の原島万二の目線で1課と2課の関係性や人間関係が描かれている。八角というのは二課の係長で会議でいつも居眠りをしていて上司である年下で課長の坂戸信彦を助けるどころか無視するようなちょっと嫌なやつだと原島は思っている。坂戸は営業部長の北川はなぜか八角の態度を注意しないことを不思議に思っていて弱みでも握られているのかと疑ったりする。そして、会議後に坂戸が八角をひどく叱責しているのを見かける。それからちょっとして八角が坂戸をパワハラで訴え、八角に非があるので、たいしたことにならないと思っていたのが、坂戸が配置換えで人事課へ飛ばされ、玉突き人事で自分が営業1課の課長を担当することになる。このことが発端になり各章の登場人物が結果的にそれぞれ同じものを違った方法で調査していくことになる。
〈第2話のねじ六奮戦記〉では営業1課の元取引先の下請け会社『ねじ六』を原島が訪れる。元取引先というのは坂戸が課長だった時に急に取引がなくなったからだ。主に出てくる会議はこのねじ六の会議だ。
〈第3話のコトブキ退社〉では営業四課の浜本優衣が主役で、ここが一番おもしろかった。恋愛がらみで退職を考える話だった。そして最後にこれだけは自分が頑張ってやった仕事といえるものが欲しくて会議で社内で『無人のドーナツ販売』を提案する話だった。ドーナツ屋さんを探したりするところからわくわくしてしまった。
〈第4話の経理屋稼業〉では経理課の加茂田、新田がコスト面で違和感を持ち営業1課の原島の周辺を調べる。
〈第5話の社内政治家〉ではタイトルとはちょっとイメージが違うカスタマー室の佐野がクレーム対応をしていてある疑問を持ち、これまた営業1課の周辺を探る。
〈第6話の偽ライオン〉では営業部長の北川と八角との関係が詳しく描かれている。
〈第7話の御前会議〉では親会社のソニックから出向で来ている東京建電副社長の村西京助の話が中心で親会社、子会社の関係性が分かる。
最終話の〈第8話の最終議案〉で7話までの絡まった糸が解けて、不思議なくらい登場人物のイメージが変わるのがおもしろい。

 もともと推理小説が好きなのだけれど、この作品も新しいタイプの推理物だと感じてすっかり池井戸潤さんのファンになった。まだまだ知らない作品があるので読んでみたいと思う。

 

七つの会議 (集英社文庫)

七つの会議 (集英社文庫)