幸せなひとりぼっち

映画『幸せなひとりぼっち/En man som heter Ove(2016年公開)』を観た。スウェーデンの映画だった。監督はハンネス・ホルムで過去の作品では日本のスウェーデン映画祭2014で公開された『青空の背後』などがあるようだけれど、私はこの作品が初めてだった。北欧の映画は自分はまだまだ詳しくないけれど本当に素敵な作品が多いと思う。以前日記で紹介した『ハロルドがわらうその日まで』もそういえばスウェーデンの映画だった。この作品同様、おじさんというかおじいさんが主役でテーマになっていることも重なる部分が多かった。主演のオーヴァを演じたロルフ・ラスゴードは舞台などでも活躍しコメディも得意な俳優さんらしい。哀しいけど幸せという対照的な表現が混ざった難しい演技をさらっとできてしまう名優だと思った。

ネタバレ注意です。

舞台はスウェーデン文化住宅で日本でいうところの公営住宅のような所だと思うがスウェーデンでは戸建てだった。1960年~1970年によく建設されていたらしい。そこに独りでくらしているのがオーヴァで気難しくて周囲に嫌な態度をとる。潔癖性で規則にうるさくて真面目でまがったことがきらいで思ったことをすぐ口にしてトラブルになる。文化住宅なので嫌でも人と関わるのでそれを面倒だと感じている。そして、ついに43年も働いた会社をクビになり何もかも嫌になって亡くなった妻の元へ行こうと考えるまで追いつめられる。

たまたまその時期に隣に越してきた一家がとてもフランクで偏見なしに長く住んでいるオーヴァを頼りにしてきて、オーヴァもちょっとずつ心を許していく姿にほっこりしてしまう。明るく描かれてはいるけれど「死」がテーマになっているので、それをオーヴァが意識するたびに過去を振り返り、実はオーヴァはこういう人物なんだということや、周囲の人の態度の真相などとが分かったときに最初に感じていたオーヴァのイメージが大きく変わっていて気づいたら自然と涙が出ていた。

スウェーデン社会福祉国家で有名だけれど、それが今は一部民営化して利益を求める時代になっていて「ゆりかごから墓場まで」何の問題もなくうまくはいかなくなっていることが少し作品の中で描かれていて高齢化や老後についても考えさせられた。原作はフレドリック・バックマンのベストセラーでハンネス・ホルムは最初人気小説を映像化するのは難しくプレッシャーだと感じて監督することをかなり悩んだらしいのだけれど、私はすごくこのキャストも含めてすごく好きになった。原作も読んでみたいと思う。