星ヶ丘ワンダーランド

映画『ワンダーランド(2016年公開)』を観た。監督は柳沢翔さんでこの作品はCMディレクターとして活躍中である柳沢さんの映画監督デビュー作だ。中村倫也さん、新井浩文さん、佐々木希さん、菅田将暉さん、杏さんなど人気も実力も兼ね備えた俳優さんが多く出演していて豪華だった。

ネタバレ注意です。

舞台は〈星ヶ丘〉という町で、中村倫也さんが演じる瀬尾温人は星ヶ丘駅で駅員として働いている。所属は落とし物預かり所だ。毎日のように個性的な落とし物が届き、どんな人が落とした物なのか想像してイラストをタグに書き自分なりに分かるように管理している。こんな風に落とし物に興味を持つようになったのは子供の頃の思い出に原因がある。幼少期に両親が不仲で母親が家を出ることになり、手袋の片方を温人に持っていて欲しいと渡す場面がある。母親を木村佳乃さんが演じていて真っ白な雪の中でこのやりとりをするのだけどせつなくてとてもきれいなシーンだ。その後母親は帰ってこず会えずじまいになっている。傍目には今の仕事に熱意を持って頑張っているように見えるけれど、落とし物に執着していて実はその思い出から前に進めなくなっていることが周囲の人とのやりとりで分かる。

ある日、兄の哲人から母親が亡くなったと連絡がくる。お兄さん役を新井浩文さんが演じている。今回、新井さんのシーンはそれほど多くないのだけれど存在感があっていつもどおりかっこよかった。霊安室に行くと母親が出て行った後にできたと思われる新しい家族が死を悲しんでいて、娘の清川七海を佐々木希さん、息子の清川裕弥を菅田将暉さんが演じている。本当は霊安室に入りたいのだけれど、入れない複雑な感情を中村さんが繊細に演じていた。

温人は母親の死が謎めいていて不審に感じる。現場が閉園してまもない『星ヶ丘ワンダーランド』という遊園地でしかも転落死したという。温人は今の家族だからと警察からは詳しい説明も受けれられないので、母親の新しい家族の七海などに会い、真相を探っていく話だった。その課程で20年前に母親が出て行った時の記憶を思い出すシーンが出てくるのだけれどその描き方があまりにせつなくて美しい。タイトルの『星ヶ丘』とは対照的に作品には太陽の光を効果的に使っていた。そして〈音〉を観客が感じるように音楽は最小限にしていたような気がする。それぐらい静かで美しい作品だった。ちなみにエンドロールの曲は木村佳乃さんが歌っている(めずらしい!)。

子供の頃好きな遊園地があってドイツ風なお城に入るのが好きでよく行っていたことを思い出した。そこもすごい前に閉園してしまった。この作品では子供の頃に行った遊園地、閉園後大人になって行った遊園地というように時代を越えて『星ヶ丘ワンダーランド』が出てきて、この作品の鍵になるので注目したい。

 

 

広告を非表示にする