ロスト・エモーション

映画『ロスト・エモーション(2017年公開)』を観た。監督はドレイク・ドレマスで『トワイライト』のクリステン・スチュアートと『ジャックと天空の巨人』、『X-MEN ファーストジェネーレーション』のニコラス・ホルトが主演している。

ネタバレ注意です。
舞台は世界戦争で陸の99.6%が失われた近未来の地球だった。すごく近代的な建物が使われていてCGのように見えるのだけれど、実は安藤忠雄さんの設計した建築物が撮影に使われている。外の風景も日本とシンガポールの景色ということでちょっと驚いた。製作はリドリー・スコットで安藤さんがコラボするなんて建築好きな人はたまらないかもしれない。いくつか知っている場所が出てきて感動した。淡路夢舞台と長岡造形大学は行ったことがあるのでSF映画になるとこんな風に変わるのかとびっくりした。

SFといっても内容は完全にラブストーリーだった。ニコラスが演じたサイラスとクリステンが演じたニアが住む共同体(イコールズ)では人間同士が親密な行為をすることが禁じられていて、感情をコントロールすることが義務付けられている。それに反するとSOSと呼ばれる欠陥者として治療されてしまう。イコールズではSOSにさえならなければ、なんでも揃っていて食べることには困らないが、裏ではいつも自殺者やDENと呼ばれる謎の施設へ送られる者が出ていてみんなSOSを発症することを恐れている。恋愛禁止の会社か!とつっこみたくなるけれど、差別もあったりするので感情をもたない人が完璧な人とされている。いくら冷静な人でも多少の感情の起伏はあるし恋愛なんて禁止されるほどしてしまいそうだなとここの政治には疑問をもった。出版部でサイラスとニアは出会うのだけれど、自殺者が出た時にニアが少し苦しそうな表情をしたことに気づいたサイラスはその日から感情がコントロールできなくなってしまってSOSに感染しステージ1と診断される。光に敏感になったり、集中力がなくなったりしていわゆる初恋をするところがこんなに苦しく悲しく描かれているSFはあんまりないかもしれない。

この作品はドレイク監督の三部作の三作目で、一作目は忘れられない過去を描いた『今日、君に会えたら』、二作目は逃れられない現在を描いた『あなたとのキスまでの距離』、そして今回の作品で可能性をかけた未来を描いたようだ。そして『愛なしに生きられるか』『愛のない世界のラブストーリー』がテーマになっている。ちょっと重いテーマだけれど、〈愛〉を際だたせる為に登場人物全員が白い衣装をまとい、白いインテリアの部屋に住んでいたり、持ち物を持たずに歩いたり、光にLEDを使ったりしていてシンプルで美しい。それに安藤さんの設計した無機質な建物が合っていてとてもきれいだと思った。三部作の前作は観てないので見比べてみてもおもしろいかもしれない。