オムライス日和

伊吹有喜さんの『オムライス日和 BAR追分(ハルキ文庫)』を読んだ。『 BAR追分 』の続編で同じく東京新宿の〈ねこみち横丁〉という商店街を舞台にした短編集だった。主な登場人物の現況はあまり変わっていなかった。宇藤くんは専従職員をしながらシナリオライターを目指している。前作ではBAR追分に来店したお客さんの話を中心に描いていたのだけれど、今回はねこみち横丁で働く人物が多く登場している。商店街の店と人物をより深く掘り下げていて謎をとくようでおもしろかった。

ネタバレ注意です。
【第1話 猫の恩返し】では地域猫の黒猫デビィと商店街の近く(デビィのテリトリー)にすむ加藤富喜子という女性が主人公だった。その出会い方がすごくほほえましい。けれどちょっとした事件になる。最近デビィが太ったとBAR追分で話題になり誰かがエサをあげている人がいるかもと思いデビィの首のリボンに「エサをあげないで」とメモを付けると「ゴメンナサイ」と返事が帰ってきたことが事の発端でそれから少ししてデビィの首のリボンに「助けて」とかかれたメモを発見してデビィの行動を頼りに助けを求めている人物を探しに行く話だった。その探し方はすごく現代的でわくわくした。都会ではご近所付き合いがあまりなさそうなイメージがあったけれど、こういうことが実際にあればいいなあと思った。
【第2話 オムライス日和】では専従職員の宇藤輝良の学生時代の同級生の菊池沙里が登場して、今はパッとしない宇藤くんが実は女子の憧れの的だったことが発覚する。そして、専従職員としてウェブの仕事をしていてその文章の技術をかわれて、フリーペーパーを発行している会社『きしだ企画 新宿・花日和』に連載のエッセイをかけた面接に行く話だった。小説だけれど宇藤くんをつい応援してしまった。
【第3話 ようこそ餃子パーティーへ】は商店街の感謝祭、フリーマーケットの話だった。BAR追分ではたらく伊藤純のファンクラブがありなにか過去にあったことがうっすら分かる。
【第4話 森の隠れ家(リトリート)】ではBAR追分の常連の鍼灸師の久保田先生が主人公だった。鍼灸院の名前が〈森の鍼灸院〉でそこに伊藤純が通院していて前話よりさらに伊藤くんを掘り下げていく。それが治療をうけながらの対話形式になっていてそこで聞いているかのような臨場感だった。久保田先生が好きな日本酒と豚のしょうが焼きを伊藤くんにふるまうところがすごくよかった。

もちろん他の章でもおいしいものが出てくる。【第1話 猫の恩返し】は〈おだしや〉のうどん。【第2話 オムライス日和】はタイトル通りオムライスで3種類のソースのくだりがすごくおもしろい。【第3話 ようこそ餃子パーティーへ】では宇藤くんの手作り餃子とオムライスだった。登場人物の悩みを色々目にして考えさせられるけれど、不思議とほっこりしてお腹がすいてしまった。 

オムライス日和 BAR追分 (ハルキ文庫)

オムライス日和 BAR追分 (ハルキ文庫)