秋の理由

映画『秋の理由(2016年公開)』を観た。監督は福間健二さんで過去の作品では『わたしたちの夏』『あるいは佐々木ユキ』などがある。詩人としても活躍されておられて、今作の『秋の理由』では脚本も担当している。出演は寺島しのぶさん、伊藤洋三郎さん、佐野和宏さん、諏里さんなどが主演していた。寺島さんと諏里さんの出演の作品は目にしているけれど、伊藤さん佐野さんの演技をしっかり見るのは初めてかもしれない。

ネタバレ注意です。

舞台は映像から東京かなと思った。伊藤さんが演じたのは小さな出版社を経営する宮本で、佐野さんが演じたのは村岡正夫という小説家だった。この二人は仕事を一緒にしていた友人で現在は疎遠になっている。村岡は精神的なことから声がでなくなってしまい『秋の理由』という作品以後小説を発表していない。宮本も経営がうまくいかずこの先どうしようか思案中だったからだ。
ある日、宮本が道を歩いている時に強盗に出くわし倒れていたときに未来という女の子に出会い仲良くなる。未来を諏里さんが演じている。未来は何者なのかは映画の中で詳しくは語られない。ただ偶然知り合いの女の子と会ったりするので近郊に住んでいたことは分かる。後は想像するしかない。諏里さんは独特の雰囲気を持っているので、よりミステリアスな未来になっている。その未来がたまたま村岡のファンだったことから話ははずみ距離が近付く。宮本は未来に言われ自分に好きな人がいることに気付いてしまう。

村岡を演じた佐野さんの声が出ず苦悩する演技がすごく迫力があるのだけれど、佐野さんは実際に咽頭ガンを患い声帯を失って仕事に復帰されたことを知らずに観てしまった。役どころでは精神的に声がでなくなって3年という設定なので、寺島さんが奥さんで、村岡が周囲に当たり自暴自棄になる場面では奥さんと村岡の両方の気持ちが痛いほど伝わって来て苦しかった。伊藤さんは宮本という役の中で還暦を越えたおじさんで村岡との大人の友情と大人の恋を演じる。頭に大人とつけば大概どろどろしがちなのだけれど、伊藤さんが見た目がすごく若くてかっこいいので清潔感があってさわやかだった。

『秋』がテーマの映画は概ねさみしい。日差しが傾き涼しくなり、人恋しい季節なのでキラキラはしていないけれど、しっとりとした雰囲気があるのでテーマにした作品ではけっこう好きなものが多い。この作品も景色が綺麗だし叙情的で詩を読んでいるような台詞もすごくよかった。福間監督の詩も読んでみたい。 

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